2010年5月3日月曜日

ブリュッセルの週末のこと

4月の最後の週末はとても天候に恵まれて楽しい週末だった。気温も25℃超えで、人々は半袖やノースリーブで歩いているし、カフェやレストランは外に席を出して、みんなビールやらワインやらを飲んでいる。好きになれないだのなんだの書いているけれど、ブリュッセルも春が来ると、とたんに素敵な街になる。天気がよいのは七難隠すってところかな。

 土曜日、これまで購入を検討してはやめてきた牽引型のこども用自転車を買おうと決めた。こどもも、最近は重くなって来たし、飛び乗ったりふざけたりするので、日本で買って持って来た無印の自転車に、後部座席を付けたものはそろそろつらくなって来たのだ。こっちではときどき見かけるのだが、後輪だけのこども用自転車からにゅーっとバーが延びていて、大人の自転車のサドルの下に付けられる、というものがある。幼稚園にもドイツ人父子で、毎日それで通園している子がいて、家ではくっつき自転車、と呼んでいた。それを、私のこっちで買ったクロスシティの自転車にくっつけようというもの。
 朝、マルシェのついでに自転車店に行ってみると、新品と中古と1台ずつあって、中古だと半額くらいになるのでそっちを買うことにした。親の自転車にも金具を付けて、そこでつけはずしをするようにするので、取り付けをお店にお願いする。中古のなので、チェックしてから売りたいというので、合わせて午後の引き取りに。
 午後、夫は自分の自転車で、私とこどもはトラムで受け取りに行く。くっつけある自転車を見て、こどもは大喜び。さっそく、公園内の自転車と歩行者のみの道を走る。自分一人で漕ぐよりスピードが出るので、面白いらしい。自動車道と交差する陸橋をわたるところは大騒ぎになる。しばらく走って、どこに行こうか? よし、じゃあ、小学校まで行ってみよう。小学校は、家からは距離はたいしてないのだが(自転車20分というところなので、4-5kmか?)、交通の便が悪いため、公共交通機関を乗り継いで行くと大回りになってしまうのだ。このくっつき自転車で行く実験をしてみよう。公園内の遊歩道がかなり近くまで行っているので、楽に行くことができた。土曜日は、現地やインターナショナルの学校に通う日本人が、日本の教育を受ける「補習校」の日なので、校庭で遊んでいる親子連れがけっこうたくさんいる。こどもも入りたがるが、きょうはカードキーを持って来ていないので入れない。
 そのまま、今度はちょっと街中の方へ出て行って、アイスクリームを買って食べる。途中の温度計が27℃と示していたが、アイスの店も長蛇の列。人々も、外を出歩いて、一気に夏の風景になっている。
 帰り道、最後になだらかなのぼりがあるけれど、こどもが一緒に漕ぐので、少しはあとおしになって、楽しく上ることができた。トラムと、自動車道と、自転車道とがマロニエ並木を挟んで並走しているところで、気持ちのよい道。ロードレーサータイプの自転車も、家族連れもたくさん自転車を走らせていた。

 翌日の日曜日、ブリュッセルの郊外、一ヶ月だけ開放するチューリップ庭園があるというので予定していた。と、夫が直前になって、「この日はいろんなビール醸造所でオープンデイだそうだよ!」とネットで見つけて来た。ビール醸造所オープンデイと称して各地の醸造所が見学できるらしい。いかなくちゃ!
 夫が、これまで飲んで来たビールを中心に、回るところを決める。
 最初は、ピンクの象のマークが可愛い「Derilium Tremens」を作っているHuyghe。可愛い〜なんて言っているし、淡い黄金色の香り高いあっさりタイプのビールなのだが、アルコール度数が高くて8.5%。そもそも、このDerilium Tremensというのが、アルコール禁断症状による幻覚症状という意味で、ピンクの象は、その幻覚を表したものなのだそうだ。
 近くまで行くと、ピンクの象のロゴマークの入ったポロシャツを着た若者が、誘導してくれて、近くの小学校に車を置くことができた。そう、ビール醸造所オープンデイで、もちろんみんな飲むだろうに、へんぴなところも多く、自動車率は高い。このHuyghe社では、飲まない運転手を一人指名しておこう、というボブキャンペーンのポスターを貼り、啓蒙活動?に勤めていたが……。
 さて、アールデコ調のたてものを、あざやかな水色に塗って、ピンクの象を描いた建物に入ると、まずは、古い瓶や馬車、ジョッキ等の歴史的展示。その後、不織布のシャワーキャップを渡されて、かぶって銅の発酵釜を覗く。パンに似た酵母の匂い。その後、寝かせておくステンレスタンクの部屋。瓶詰めして、箱詰めして――を、昔懐かしい「工場見学」みたいに順路に従って見る。最後は、箱が山積みになった裏庭をぬけて倉庫へ。そこで1杯ずつ無料で試飲できるので、私はやっぱりDerilium Tremensを、夫はフランボワーズ入りのフルーツビールを。倉庫の外では、こども連れのために、ロゴの入った風船を配ったり、空気で膨らませたトランポリンのような遊具があったり、こどもをそこに放し飼いにして、大人はビールを飲んだり、酔いを醒ましたり。子連れは多いが、やはり近所の人が多いのか、フラマン語が多かった。そうそう、自転車で乗り付けている親子連れ――なんてのも多かったのだった。


 次は、ブリュッセル近郊でしかできないという酸っぱいビール「ランビック」を作る「Mort Subite」へ。この酸味を出すのは、ブリュッセル近郊の空気中に漂っている天然酵母のみなのだそうだ。このMort Subiteも、直訳すると「突然死」という意味。ブリュッセルの一番の観光地グランプラスそばにある直営のカフェで、銀行員(新聞記者という説もあり、私はそっちを支持したいところだが……)が夜、ビールを飲みながら賭けカードゲームをしていて、会社から急な呼び戻し(新聞記者という説だと、特ダネが入って社に呼び戻されるという。ね、こっちのほうが信憑性があるんだけどなあ)があると、その抜ける一人が「突然死」を宣言し、ゲームはそこでストップ、その人が負けになるという、そんな遊びからついた名前だというのだ。
 ここは窓も大きくとった、学校のような建物。ランビックは長く熟成させて酸味を出すので、樽ごとに、銘柄と仕込んだ日が書かれた小さい黒板が下がっていたりする。銅釜や、オークの樽もあるけれど、それは歴史的記念物としての展示で、今は、ステンレスタンクで熟成させるらしい。
 ここでは、白ビールにサクランボを加えたものと、ランビックに砂糖を入れて飲みやすくしたファロ。これまで飲んだファロは苦手だったけれど、ここのは甘みが控えめでとても美味しかった。ここにも空気トランポリンがあって、小学校高学年とおぼしきおねえさんが小さいこどもの面倒を見ていて、うちのも一緒に遊んでくれていた。感謝を捧げつつ、ビールを飲む。途中で、その子がやってきて「この子はフラマン語は出来ないの?」と聞く。夫が、片言のフラマン語で「残念だが、できない」と答えると、がっかりしていた。それでもその子は帰るまでずっとうちの子と遊んでくれた。途中で、その子と一緒にひきあげてきたので、ソーセージパンを買って来て食べさせる。ここのはランビック煮込みのソーセージだった。ジャズの楽隊がやってきて、演奏をする。戸外でビールを飲んで気持ちよくすごす季節がやって来たなあ。

 ここで、ビールツアーをいったん休憩。チューリップ庭園を挟むことにした。古城の庭でGroote-Bijgaardenという。チューリップで有名なのはオランダのキューケンホフだけど、人工的すぎるし、人も多い。ここのなんとなくきっちりしていない感じの庭園が私たち夫婦は気に入った。白鳥のいる池や芝生、自然な起伏もあり、雑木林のような木立があって雰囲気が良い。昔、大船のフラワーガーデンというところによくチューリップを見に親に連れて行かれたものだが、そこを思い出したりもした。

 さて、最後のビール工場はTimmermans。ここはフルーツビールに力を入れているところで、よくあるサクランボやフランボワーズ以外にも、桃やイチゴのを作っていて、それも飲ませてくれていた。ここは、一番、見学に力を入れていて、ガイドツアーが催されていた。私たち家族は、勝手に見て回っていたのだが、英語、フランス語、オランダ語のツアーとすれ違った。ここでも酵母を大きなステンレス槽で発酵させているところを見学できたが、Huygheと違い、どこか味噌とか、煮豆とか大豆の発酵する匂いを想像させる匂いだった。そのまま、熟成させる樽の部屋へ行くと、一気に酸味のある匂いになる。

 ドイツ語でも、一年で一番美しい季節は五月というし、これから、ヨーロッパは一番素敵な初夏になる。マロニエの並木も、緑が濃くなって、花も開き始めた。家の近くの公園は、去年まで水を抜いていた池に水をはってボートも営業を始めている。こっちの人でなくても、外に出なくちゃ! という気持ちになってくる。

 でも、今日、こんな文章を書くまとまった時間がとれたのは、昨日今日と、また一日中降ったりやんだりの薄暗いてんきだからなのであった。

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