2010年3月5日金曜日

リコーダーのこと

 先日のカーニヴァルの旅で、いろいろ買い物をして来た――と書いたが、その目玉はアルトリコーダー。
 こっちの日本人情報誌でお稽古ごと情報を見ていたときか、在住者のブログでクラリネットを買った! という記事を読んだあたりからか、むらむらとまたなにかやりたいという気持ちが盛り上がってきた。中学の時と大学のときと、吹奏楽部でクラリネットをやっていたし、幼稚園から就職直前までピアノは習っていたし、才能はないし、好き嫌いの意味でも仕事に出来るほどの執着はないが、なんとなく音楽に触れているのが好きなのだろう。
 人間関係が得意ではないので、習い事に通うつもりがなく、集合住宅なんだから大きな音の楽器は無理――と考えて、そうだ、簡単に出来そうで、そう高くなく買えそうだし、古楽が盛んというベルギーの思い出になりそうっていえばリコーダーじゃない? と思いついてしまったのだ。ネットで調べると、ドイツのMoeck社とMollenhauer社が最大手みたいなので、買うのはドイツで買おうと思うのもまた素敵な感じ。検索しているうちにせっかく「大人のリコーダー」なんだから木がいいとか、どんどんのめり込んで行くが、夫は値段を見て「えープラスティックじゃだめなの?」などという。まあ――おもちゃにしては高いけれどさ……。そのくせ、出張でウィーンやボンに出かけたときに「楽器屋でリコーダー発見、Moeck社」とか、値段情報とかをメイルで知らせて来たりする。そもそも、音楽好きという度合いでは、夫の方が上なくらいなのだ。
 よし、次のドイツ行きで買おう! 全部木でできてるうちで安いものを選んで買おう、と決心。ボンや、Bad Godesbergなら楽器店もイメージがある。ドイツ在住期には、先に帰った夫の同僚からピアノを買い受けていじっていたので、楽譜を買いに、と理由をつけてよく遊びに行っていたのだ。
 他の予定とのかねあわせから、ボンの中心にある楽器店に行く。夫が出張時に下見済みなので、一階のピアノ売り場や子供用楽器にひっかかるこどもを追い立てて地下の売り場へ行く。店員さんにアルトリコーダー(木の、安いの)を見たいと言う。まずはMoeck社で出してくれて、一番安いのと、もう一段階上の、吹き口が違うというのを見せてくれる。試していい、というので吹いてみるが、緊張して音も良く出ないし、正直よくわからない。もう一つ、Mollenhauer社のを出してもらって、それが最低音が一番安定していたし(店員さんの話からしても、それは押さえ方の問題だと思うが)、一番安い(貧乏性)ので、それにする。調べていたときにMollenhauerのほうが、会社が古いし場所もフランクフルト郊外でイメージがある街、ロゴもシュタイナー文字で格好よいと思っていた――理由もあるが、うーん、どれも本質とは違う。
 私が三本出してもらって迷っている間に、いきなり夫が「僕にはソプラノを見せてもらえませんか」と言い出し、試し吹きを始める。「いや、オレも買う。ソプラノなら子供に吹かせてやっても良いし」。彼の方が積極的だし、ドイツ語も出来るので、何本か吹いて、「あ、今の明るい音ですごく違う、それにしたら?」「いや、これは1本だけ高いの出してもらったの。買う気はない」なんじゃそりゃ。彼も「学校用」という木製の中ではやっぱり安いのを買った。ホテルでいきなり出して吹いてみたりして、気分が盛り上がる。

 さて、帰ったところでさっそくちゃんと吹くことにするが、木製のは樹脂製とは違って、最初は慣らしが必要だという。Mollenhauer社のサイトでは、「最初の4週間は毎日、20分以上にならないように」とあり、Moeck社に至っては、最初の4-6週間は毎日とした上で「最初の1週間は1日5分、次の1週間は15分、その次は……」と細かく指示がある。吹いているうちに音がかすれてくるから、そうなったら無理しないでやめるように、ともあって、ふーんと思って始めたが、本当に、最初は長く吹けない。すかすかっという音が混ざるようになり、苦しそうな音になってくる。夫に言って、夫のソプラノも慣らしを始めることにする。会社が違うせいか、ソプラノとアルトの違いか、音の慣れ方が違うような気がする。私のは高音もわりとすぐ出るようになったが、まだまだそう長くは吹けないが、夫のは、長く吹けるようになって来たけど、高音は全然出ない。ソプラノの高音が私にはちょっと嫌いな音域に入るので、吹き方に迷いというか、逃げがあるのかもしれないけれど……。
 こういう個性の違いや、慣らす、育てて行く感じが醍醐味なのだと思うが、私はやっぱりせっかちなので、いらいらしたり。学校用なんていうリコーダーなのに、ほんとうに学生もこれに耐えているのか? 夫に言わせると、義務教育で音楽はないから、好きで選択しないとできないので、忍耐できるのだろうというが。とはいえ私も、吹ける時間が延びて来たり、音が太く安定して来たりするとやっぱり嬉しい。
 ロングトーンや音階だけだとつまらないので、適当に曲も吹き始める。そらでふける曲ということで、やっぱり小学校で習っていたような曲から、季節感を考えて「朧月夜」とか、グリーンスリーヴスを吹いたり。さらにはアニメソングに走って「となりのトトロ」のエンディングや、格好付けてヴィヴァルディの「四季」から冬や、『ホフマン物語』の舟歌を吹いて悦に入ったりする。吹き始めてから、音が足りないことに気づいて転調したりするので、はたから聞いていたらさぞおかしいことだろうと思うが……。耳なじみのない日本のメロディが聞こえて来るのも、変だろうなあ、でも、40代にもなったおばさんが、「さいたーさいたーチューリップのはなが〜」などと妙にろうろうと吹いてうっとりしている姿を日本で見たら、そのほうが怖いか。

 たいていはこどもが幼稚園に行っている間にこっそり遊んでいるのだが、先日、こどもがいるときに吹いてみた。案の定、自分もやりたがるので、ソプラノの方を触らせてみるが、やっぱり指押さえが難しいのか、ちゃんと吹けない。二人羽織状態で私が押さえて吹かせるとちゃんとした音になるので、吹き込み自体は悪くないのだと思うが。悔しがって、古くからもっているシロフォンを出して来て一緒にやろうと言い出す。4歳になって音楽教室に通わせ始めたのが、3ヶ月でやめて引っ越して来てしまったのだ。楽譜読みもまだまだなのだが、リコーダーに合わせて、「どれみれど」と叩いてみろ、とこどもに指示すると、『ピタゴラスイッチ』の「こたつたこ」のメロディが出て来るので、こどもはびっくり、大喜び。そういう顔を見ていると、ああまた、音楽を習わせたいなあ――という気持ちもむらむらと湧いてくる。楽譜が読めるようになって、いじれる楽器が出来てくると、ほんとうに楽しいんだよ。

 どうせクラシックの正統な曲はこっちで楽譜も買えるんだから、と、栗コーダーカルテットの楽譜をネット書店で注文して、来週には届く見込み。それが届く頃には少し、演奏できる時間も延びているのだろうか。

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 話替わって、StingのライヴDVD『A Winter's night...』を買った。CDはすでに買っていて、とても好きなので、ついつい買ってしまったのだ。が、CDや、プロモーションヴィデオから想像するモノトーンの雰囲気と違って、派手なライティング、満面の笑みのStingさまと、どうも最初はひたれず、買ったことを後悔してしまったくらいなのだが、見ているうちにバックの楽器がとても面白い。CDで聞いたときに想像したのとまったく違う楽器だったりもするし、見たこともないような古楽器(おそらく)も出てくる。やっぱり引き込まれてしまう。このところ春っぽい日が続いて、このアルバムの雰囲気ではなくなっていたのだが、今朝はまた小雪が舞ってきた。

4 件のコメント:

Asako さんのコメント...

今日たまたまStingを映像で見たのですが(YouTubeのJimmy Kimmel Liveの一場面。相当くだらない)、「ハンサム・マン・クラブ」のメンバーというふざけた設定のせいで、なんだかイメージと違いすぎてギラギラしてました。

木製リコーダーって、へー、そうなんだ。面白そう。お子さんも本当に音楽やるといいですね。私も音楽は推進派です(が、長女はちいとも楽しまないので、やめさせました。やめるのを止めなかったということ)。まあ、もう少し時間をおいてから、声をかけてみようと思っていますが…。

Amsel さんのコメント...

うわ〜、ギラギラしたスティングさま、見たくない〜(笑)。スティング単体のプロモとかだと、ちゃんと枯れた味わいに作ってるのだけど、最近、なんかぎらぎらした顔になってますよね。ライヴだと元々こうだったかも……ですが。
その後、木製リコーダーは30分くらい吹けるようになりました。音も良くなってきましたよ(自己満足)。こどもはときどき手を出しては、すぐ出来ないことにかんしゃくを起こしてシロフォンに逃げ、を繰り返してます。
まだ帰国時期が未定なので、先送りしてるけど、あと1年以上こっちにいるなら、なにか始めても良いな、と思ってます。そうそう、最近、日本の小学校って、ハモニカじゃなくてピアニカなんですね!

Asako さんのコメント...

そっか。昔はハーモニカだったのか。私は小学校に「入学」してないので、よく分からない。ピアニカもやらずじまいでした。
たしかに今は入学後すぐピアニカ買わされますが、でも面倒くさがって学校であっせん(?)されたのを買ったので、Yamahaではないのです。授業でも律儀に「鍵盤ハーモニカ」と呼んでやっているみたい。なぜかうちの長男は「鍵盤ハーモニー」と呼んでいた時期があって、なんか、かわいかったんだけど、最近正しい呼び名に戻っています…。

Amsel さんのコメント...

私のときは、個人で買うのはハモニカ、ピアニカは学校にあって、合奏のときに使う――って感じでした。ブリュッセルの日本人学校で用意しろってあった(もちろん、書類上は一般名称の鍵盤ハーモニカです)ので、調べたら、世代的に替わっている(もちろん地域差、個別の学校の差はあるらしいけれど)というので驚いたのです。ハモニカって500円くらいで買えたイメージがあったので、すごい負担増! モノとしてもかさばるしね〜。