2010年3月3日水曜日

コロッケのこと

 母親から、メイルで「悲しいお知らせ」と称して実家近くの肉屋さんが閉店したことを聞かされた。驚いたけれど、考えてみれば、お子さんが私と同世代、ということはおかみさんも親と同世代、無理はないのだろう。
 このお店は、コロッケとメンチのお店として我が家では長く愛用していた店。休日の昼、うどんかそばに、おかずは買って済ませよう、というときによく買いに行っていた。日曜日の昼、図書館の帰りに父親が買ってくる――というパターンが一番多かったか。母親は、買って来た惣菜を食べるのは、手抜きと感じる性格だけど、この店のコロッケとメンチ、もう一軒、鶏肉屋さん(これももう今はなくなってしまった)の焼き鳥は、買ってくるから嬉しい献立、とされていた。
 コロッケとメンチは人気なので、お昼はどんどん揚げて揚げたてを売ってくれる。昔ながらの経木に包んでくれてはいるけれど、蒸れないように買って来たら包みから出してしまうので、いいにおいに耐えきれず、うどんがゆであがる前に食べてしまうこともしょっちゅうだった。ゆで上がりと買って来る時間を合わせようと、お湯を沸かし始めてから買いに行くことにしたり、混んでいて意外に時間がかかってやっぱりタイミングがずれたりで一喜一憂したり。すんでのところで買いのがして、ハムカツやしゅうまいを買ったり(この二つも美味しかったのです)。
 コロッケとメンチは、かならず人数分買って来るけど、祖母が「食べきれないからメンチはあげるよ」と言って、兄と私、兄が家を出てからは父と私で分け合ったりした。それでも、最初からメンチを減らして買ったりしなかったのはなぜだろう。金額の計算が面倒だからと言うのもあるだろうが、定食として、一回はお皿に両方盛る、というのが形式化していたからなのか。祖母だって、最初からいらないから盛るな、とは言わなかったのだ。
 結婚してからも、実家に帰ると、一度は食べたいと言って、買いに行ったりしていた。

 こうして書いていていもリアルに味が舌によみがえってくる。私もいろいろな店でコロッケやメンチを買うようになり、美味しいと思う店を開拓したりしていたけど、コロッケ、と聞いてまず味が浮かんで来る「コロッケ原風景」はこの店のものなのだ。最近読んだよしもとばなな氏の『ごはんのことばかり100話とちょっと』で、甲乙付けがたいコロッケとしてお姉様の作られるものと、こどもの頃の近所のお店を挙げられていたが、その一節を読んでいたときに、私の舌の上によみがえってきたのはこの店の味だった。『11ぴきのねことあほうどり』のコロッケもこの味で読んでいたんだよなあ。

2 件のコメント:

Asako さんのコメント...

そうなのです!!
あのあたりは軒並み(文字通り!?)閉店している感じで、八百屋さんや化粧品屋さんもなくなったそう。唯一、あのころからあったサンドイッチ屋さんはまだ奥さんががんばっているらしい(同じ店の話をしていると思うのだが…、違うかなあ)。
私自身は実は親がお肉屋さんのコロッケを買ってくれず、コロッケと言えば母親の手作りの家庭だったので、大きくなってから自分のお小遣いで「憧れて」買ったことがある程度。それも、大きくなってしまっていたので、好きにはならなかったのでした。だから、味をMissすることはないけれど、でも、やはり、さびしい…。

Amsel さんのコメント...

いやたぶん、同じ店でしょう(笑)。あの通りは、本当に変わったよね……。