2010年2月3日水曜日

歯のこと

 子供の歯が抜けた。第一号。下の前歯である。ずいぶん前からぐらぐらしていたのだが、子供にとっては、とても嬉しかったらしく、毎日、気にして触ってみたり、幼稚園の同級生に触らせてみたり。いつもの日本人グループの子たちはもちろん、普段、そう仲が良いと思えないような男の子の名前を挙げて、その子の歯は、もう上が抜けていたとか言っていた。
 もう、大人の歯なんだから、虫歯になったら大変だよ! と脅かしても、本人にはあまり実感が湧かないようだ。かこさとし氏の『はははのはなし』をまた読ませる。そんなことは大人の考えることで、子供にとっては、歯が大人の歯になる、ということはとても嬉しいことらしい。抜け替わった歯をさっそく見せびらかせいて回って、また、自分より早く永久歯が大きくなっている子がいるとか、興奮して語っている。歯の抜け替わりの早さは個人差が大きいというが、同じクラスで一番小さい11月生まれ(といっても、ドイツ人で身体は大きい)女の子も、もう1本目の永久歯が完全に大きくなっていたり、同じ3月生まれの男の子で、身体も小さいし、おっとりしている子が、もう上の歯が抜けていたりと確かにまちまち。
 よほど嬉しかったのか、「もうお姉さんになったから、今日は一人で寝ます!」と宣言、いつもだったら、それでも結局寝る段になったら、父親を呼びに来たりするのだが、その日はちゃんと朝まで一人で寝ていられた。翌日には、また一人で寝られない子供に戻っていたけれど。

 夫も私も、乳歯のときから虫歯があったし、歯科医にはずいぶんと通った。誰でもそうかもしれないが、私は本当に歯科医が嫌い。自分で行くのも嫌いだが、子供を連れて行くことにはなりたくない。これまで行かずに済んでいるのは幸いである。もちろん、歯科医もどんどん進化しているとは思うが……。
 最後に通っていたのは会社のそばの歯科医。マニアックなまでに歯を好きな院長を気にいった同じ部署の先輩が布教して回って、何人もの部員が通っていた。歯についての哲学があって、いくらでも語ってくれる。ある時、朝一番の予約のキャンセルをしなくてはならないことがあり、夜のうちに留守電に入れておいた方がお互い好都合かと思い、22時すぎに電話をしたら、院長が出たことがある。診療時間のあとは、自分の勉強時間にしているのだとか。翌日の治療について、計画を立てたりしているらしい。自分の治療例の記録を取るのも好きで、ずいぶん、私も口の中の写真を撮られたものだが、それを見て復習をしたりもするらしい。そんな話をまた熱く語られてしまった。
 人間的には非常に気に入っていたのだが、最後に下だけ残っている親知らずを抜くことになり、片方抜いたときにとても痛くて、また、性格がへたれなので、そのものの痛さもさることながら「嫌だなあ」という気持ちが強く身体がこわばってして、全身が凝ってしまい、一週間、本調子に戻らなくなってしまった。次は、もう片方を抜きましょう……と言われて、のらりくらりと逃げているうちに、引っ越してしまったのだ。

 さて、日本では、抜けた歯を下の歯なら屋根の上に、上の歯は縁の下に投げる習慣があったと思うが、ヨーロッパでは、最初に抜けた歯は寝るときに枕元においておくと、ネズミや妖精がやってきて、歯をもらって帰って、代わりにコインやお菓子をくれる――という言い伝えがあるらしい。また、抜けた乳歯をとっておく入れ物もある。ドイツだと、雑貨屋やおもちゃ屋に木製のかわいいものがあるし、ブリュッセルでは、薬局の子供用歯磨きのところにプラスチックの歯の形のものを見たことがある。調べたら、日本でも記念にととっておくケースがいろいろ出ているようだが。ものとして可愛いいものもあるし、欲しい気持ちもあるのだが、抜け落ちた歯というのは、私は少々気持ち悪さを感じてしまう。最初の一本だけならまだしも、どんどん貯めていくのだろうか?
 うちの子供の歯は、夫がとりあえず……といって小さなジップロックに入れてしまっていた。

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