2010年1月8日金曜日

ドイツ年越しの旅のこと



 年末年始は、雪遊び目的でまた南ドイツに行って来た。バイエルンのRuhpoldingという街に長逗留したのだが、直前のブリュッセルは雪だったのに、急激な暖波が入って、連日10℃超えだという。宿の目の前に子供用の簡単なスキー場やそりで遊べる斜面があったのだが、草原と化していた。真ん中のスキーゾーンにだけ、意地で毎日人工降雪機で降らせていたが……。夫はがっかりしていたが、私も子供も、宿やカフェ等、気に入った場所ができて楽しい街だった。

 宿は3階建て+地下で階段にあった記念彫り?を見ると1968年にできたらしい。私たち夫婦と同じ歳と思うとまた親近感が。おばあさん(宿のできた年から推測すると、うちの親と同じ70代後半くらいというところか)が基本的に一人できりもりしていて、休みの日や夜は、息子なのか、50代くらいの男性がいる。泊まったのが最上階の屋根裏部屋のような天窓のある部屋。私はとても気に入ってしまい、将来はぜったい天窓のある家に住みたい! という気持ちがまた盛り上がる。ブリュッセルで見た物件で素敵な屋根裏部屋のある物件があったのだが、お風呂が浴槽がなくて断念したのだった――その後生活してみると、立地的にも今の家で大正解だったとは思うが。

 さて、宿にたどり着いた翌日は、私が頭痛、娘が喉+微熱と移動疲れが出てしまっていたので、部屋の掃除も断り、部屋でだらだらしたり、必要な子供のスキーズボンほか、買い物をしてゆっくり過ごすことにする。朝食時、主人のおばあさんが、私に3度も「良く寝られたか? 大丈夫か?」と聞くので、失礼ながら少々ぼけているんじゃないか? と思ったが、それだけひどい顔をしていたということかもしれない。いつもならコーヒーを飲むところを2日はミントティにして、3日目に「今日はコーヒーを」と頼んだら「あら! 元気になったのね!」と喜んでもらえた。でも、その日はそのままミントティが出て来たので、やっぱり……? 朝食には毎日おばあさんと同じ世代のおじいさんがやってきて、朝ご飯を食べて、おばあさんと、長々しゃべっている。年越しのときに、夜はどうしてたかとか話していたので、宿泊客なんだろうと思うが、常連っぽい。きっと、若い頃から毎年この宿で年越しをしていて、「お互い連れ合いも亡くしたけどねえ」なんて言いながら、今も来ているのではないか、と勝手に想像する。

 次の日、朝食で少し部屋を空けた間隙を縫って、お掃除が入っていた。とてもきっちり整頓されていて、びっくりする。こういうものはここに置く、というルールがあるらしく、枕元に置いた本はサイドテーブルに、パジャマは枕のしたに隠す、薬や食べ物がいろいろなところに置いてあるのは、一カ所にまとめる、床に置いておいたスーツケースはローテーブルの上、各人がそれぞれのベッドのそばで脱いだ靴は、まとめてそのローテーブルのしたの段、靴とか運んで来て空になっていた段ボールは衣装棚の上、マフラーや帽子、手袋等の小物は飾り棚の上――等等、神業のように片付けられてしまっていた。決して、私たちがもともと置いておいたところが尊重されたりはしない。感動して、翌日からは、そのお掃除おばさんルールに従ってきっちり整頓してみたのだが、やはり私がやることなので甘いらしく、朝食から戻ると、いろいろ「あ、これはこっちに移動してる!」があった。洗面台で干しておいたスプーンは水気をとって薬や食べ物の置かれた棚へ、同じく干しておいた湯たんぽはシャワースタンドへ。
 そのお掃除の神様は60代くらい、朝食のところのおばあさんより一回りくらい若い感じ。おばあさんはおっとりした上品なタイプだが、彼女は、テキパキしてエネルギッシュ、快活なタイプ。朝食時、台所でおばあさんとおしゃべりしている姿も良く見かけているので、私たちの姿を見ると、部屋に行って掃除してまた戻る――をやっているのだろうけれど、ほんとうに短時間でよくもここまで手が入れられるものだ、と思う。

 日中は、雪を求めて夫が車を出し、子供用斜面で、スノーチューブ(浮き輪状のものに乗って、リフトにつないで斜面を登り、カタパルト式に斜面を降りてくるそり)で遊んだり、1回は、ゴンドラに乗って山を超え、標高の高いところまで行ったりした。去年から、買うか買うまいか迷って、結局買わなかったそりを、ここまで来てついに購入してしまった。ドイツに住んでいた頃から憧れていた木製ので、折りたたみ式。
 午後の早い時間に引き上げて来て、気に入ったカフェに入るのが日課になってしまった。5泊だったのに、4回も行ってしまった。子供がそこのSandkuchen(フランスで言うカトルカールに近いものか? ちょっともそもそしたバターケーキ)がえらく気に入ってしまったのだ。あと、牛乳も。
 一日は、宿で無料券をもらった遊園地に行ってみたけれど、天気が悪くてわびしい感じが増していたこともあろうが、アスレチック公園と、ゴーカートや、ミニSLといった動くおもちゃ、ヤギを飼っていて餌を売っていたり、あと、園内に点々とある小さなコンクリート作りのきのこ型の小屋を覗くと、それぞれ、機械仕掛けの人形たちが「ヘンゼルとグレーテル」「白雪姫」などの寸劇をやる――という小田原城公園というか(どっちに対しても失礼な言い方だが)、子供だましっぽいところだった。もちろん娘は子供なのですっかりだまされて楽しんでいた。あまりに雪がなくてやることがなくて、ついうっかり来てしまったのか、同じ宿の若いカップルとばったり会ってしまったのだが、若い男女が来るところではない……。レストランの建物は新しいのかとてもきれいで、トイレがすごくゆったりしていてきれいなのが良かった。大晦日のイベントとして子供にクッキーを作らせたり、アイシングで飾らせたりしてくれていて、うちのも誘ってもらったが、けっきょくできなかった。最初に教えてくれる女性が誘ってくれたときは、まったく興味がなく、その後、面白そうなことに気づいて、近寄って行ったのだが、うちのよりは小さいと思われる(3-4歳か?)、女の子に、「あんたも一緒にやる? ここに入る?」みたいに大声で言われて、すごくびっくりして逃げ帰って来てしまった。ドイツ人は、ちいさくてもおせっかいおばちゃんの雰囲気がある。
 夕方から夜は、宿で、本(直前に届いた安野モヨコ氏の『くいいじ』を読んでいた。私も食い意地がはっているので共感できること多々。そういう目で、やはり持って行った堀江敏幸氏『河岸忘日抄』を読むと、意外と食べ物の話が多くて、それも面白かった)を読んだり、子供は、DVDプレイヤーを持って行っていたので、ビデオを見たり、テレビでやっているハイジを見たり、夫は数独やったり、『くいいじ』読んだり。数独、日本生まれだというけど、ヨーロッパの方が人気ある感じがする。新聞には必ず数独欄があるし、カフェや電車でやっている人をよく見る。私も挑戦してみたが、初級レベルしかできず残念。でも、はまる気持ちはわかりました。

 食事も宿に頼めば準備してもらえるので、街中が混雑しそうな大晦日だけお願いしておいたら、客は私たちだけで、そのおばあさんと息子、あとその時だけ見た、嫁さん?みたいな三人も別のテーブルにいて、自分たちも同じメニューを食べていた。あかりはろうそくと、クリスマスツリーの明かりだけで、暗めの食卓。クリスマスの飾りはそのままだけど、それに加えて子豚がクローバーをくわえたものや、煙突掃除夫の置物など、年越しのときの「幸運のシンボル」が置かれている。自分たちが食べるペースにあわせて、こっちにも料理を運んでくれたり、料理は、付け合わせのじゃがいものレシティなどは冷凍食品だろうし、贅沢な物ではなかったが、いかにも家庭的で美味しく楽しかった。デザートの「フルーツサラダにアイス添え」は、キウイとみかん、バナナを刻んだ物がパイナップルの缶詰であえてあって、ハート形のレープクーヘン(クリスマス時期に食べるスパイスの強いクッキーをチョコでコーティングしたもの)が乗せてある物だった。こんなのも、なんとなく、子供のときの家のごちそうを思い出させる。何を話しているか、盗み聞きで分かるほど私もドイツ語はできないけれど、楽しそうな会話が宿の家族からも聞こえてくる。

 大晦日の夜は、12時になるといっせいに花火をあげるので、宿のおばあさんも「きれいよ。部屋のバルコニーから見えると思うわよ」などと言っていたので、いわゆる大晦日特番(歌番組が多いですね、さすがに)を見ながら待っていた。子供も起きているというので、じゃあ、起きられるところまでがんばってみろ、と言ってみたが、22時半過ぎにあえなく撃沈。大人二人で寒いバルコニーに出てスキーもできる斜面に向けて打ち上げられる花火を見る。近所の教会も鐘を鳴らし始める。
 私も旅行も含め、ヨーロッパで年越しをしたのは、もう7-8回めになってしまったと思うけれど、これまで見たなかでいちばん派手な花火だった。

 元日に、この宿をあとにした。最後の日は、お掃除おばさんも朝食の手伝いをしていて、コーヒーを頼むと「もう胃の調子は良いの?」などとやっぱり聞かれたり。体調の悪いのを「胃」と言って来るのは、毎日、胃薬の瓶を見ているからなのだろうな、と思う。

 帰りは、シュタイフの博物館やローテンブルク、最後にまたボンと、回りながら帰って来た。この街を出るなり、大雪が降り、日頃の行いの悪さを思い知らされた上、夫は運転大変、ミュンヘンからそっちへ向かう道は大渋滞。ブリュッセルにも雪が積もっていて、暖房を切っていた家の寒かったこと。そして、さっそく幼稚園のお迎えにそりが活躍できました。




2 件のコメント:

Asako さんのコメント...

素敵な年越しだったのですね。
宿のおばあさんの顔まで想像できてしまうような、丁寧な描写、本当に好きです。
それにしても、カフェが好きなお子さんって羨ましいなあ。

Amsel さんのコメント...

あけましておめでとうございます。そう、ここのカフェ、とっても気に入ったので、あとでデジカメデータ整理してみたら、雪の写真なんかより、カフェの写真、子供がケーキ食べてる写真が大量に出て来て、笑えました。今、ブリュッセル、また雪です。その話も書こうと思いつつ……。