2009年12月17日木曜日

水泳教室のこと その2

 9月から通い始めた水泳教室の1クール目が終わった。

 途中から、脚のつかない深さのプールに移動して、もぐる練習をしたり、ふと気づくと、先生はプールサイドで見ているまま、飛び込まされていたり、ビート板なしで浮かされたりいて、見ている私がびっくりするくらいだったが、こっちではそうするものらしい。そして、ふと気づくと、うちの子は一番のみそっかすになっていた。すでに体力に性差があるのか、同じクラスは全員男の子で、彼らが勢いよくばた足して行っても、子供一人、力が弱いのか進まない。背泳ぎになると、姿勢が悪く、プールサイドの先生から、ジェスチャーで、天井を見ろ、と指示される。そのくせ、プールサイドでは、仲良くなった男の子とずっとくっちゃべっていて、先生の言うことを聞いてなくて怒られたりしている。いつも注意されてばかりいて、面白くなくなってしまうのではないかと気を回すと、まったくそんなことはなく、毎回楽しみにしているようだし、先生のことも大好き。鈍感なのか?


 昔はこういう子供ではなかった。

 保育園時代、3月の末に生まれた子供は、ずっとクラスで身体も一番小さく、やることなすことほかの子たちと差がついてしまっていた。保母の先生に、「いや~、なかなか気が強いです」と言われたことがある。確か、スキップのときと、かるたのときと例を挙げて説明されたと記憶があるが、最初は、まったくできないそうだ。もちろん、できる子もいて、そんな子にできないことを笑われても、怒るでもくやしがるでもなく、にこにこしていると言う。が、すっと輪に混ざらなくなり、あれ? やっぱり気にしてたのかな? と思うと、ある日、突然できるようになって、輪に戻ってくるという。確かに、スキップやかるたは、家でこっそり練習していた。それは気が強いというより、性格悪いんでは? と心配したものだ。いや、私にもそういうところがないわけではないので、しょうがないのですが。


 なので、実は、いつか水泳もできないことに気づくと、行かなくなってしまうのではないかと思っていたのだが、杞憂だったようだ。こっちにきて、自分だけできない、ということを気にしていたらやっていけないと気づいたのだろうか。

 ともあれ、最後、ひどい風邪を引いて3回たてつづけに休んでしまった以外は、楽しく通えた。


 さて、このクールが終わったあとはどうしようか。本当は、親としても送迎が大変なので、水曜日の午後、早い時間になにか習い事を入れたいとは思う。子供は、本当はダンスが習いたいという。彼女は、お姫様は王子様と踊るのが仕事なので、それを覚えないとお姫様になれないのだ、と主張しているのだ。しかし、ちゃんとしたバレエ教室はトラムで1本とはいえ距離があり、やっぱり毎週のこととなるとちゃんと送迎できる自信がない。プールのあるスポーツセンターにあるダンスコースを調べてみたけれど、それはクラシックバレエではないからか、6歳以上からとなっている。

 次のクールは3ヶ月。明けた4月からは、子供も日本人学校に通うことになる。そうすると、趣味や行動範囲、人間関係で、いろいろやりたいこと、できること、通える場所が変わってくるだろう。

 よし、新しいことを始めるならそのタイミング、次のクールはやっぱりまたここの水泳教室に通おう、と決めて、子供とも話す。


 コースの終わりに進級テストをするという。

 そんな子供なので、当然、進級できないだろうと思っていた。そして当日、他のコースの先生たちは、紙を手にして、なにかメモを取りながら見ているが、うちの先生はなにもしていない。クラスが5人(しかも、その日は一人休んでいた)なので、全部頭に入っているということかなあとも思う。

 が、次回の申し込みに行くと――継続申し込みなので、システムは前回と同じアナログながらも、余裕がある――次はグループ2ね、と事務に言われる。え? 進級できてたんですか? と思うが、聞く勇気も語学力もないのでそのまま更新して帰ってくる。もうあのクラスにも慣れて仲の良い子もいるから、一緒が良いかもしれないな、とも思う。


 そして、今期最終クラスの日が来た。

 その日は、水泳はまったくやらずに、ずっと遊び。ちょうど畳くらいの大きさの発泡スチロールの板を水に浮かべて、そこから飛び込ませたりした。上のクラスと合同でやっていて、そっちの先生がプールに入ってそっちがわを、うちの先生が、プールサイドがわを支えていたのだが、子供たちが喜んで板の上を走って飛び込み――とやっているうちに、先生が、わざと板を揺らして子供たちを落としたり、板に掴まって抵抗する子供をひっぺがしてぽんぽん水に放り込んだりとどんどん荒っぽくなっていって、子供たちの興奮もどんどん増して行く。

 一つ下のクラスは、その板の上に子供たちを乗せて、先生が、プールの中を引き回して歩いてやったり、もっと大きいクラスは、深い方のプールで、子供たちだけでその板に乗って、沖?に漕ぎだしたり、お互い突き落としたり、這い上ったり、ひっくり返したり、恐ろしい騒ぎだった。後半は、何本も滑り台をやった。

 子供たちが楽しそうな声が観覧席まで聞こえてくる。しかし、こんな荒っぽいことをされても喜べるなんて、水が怖くない、好きな子供たちになっているのだなあと感じられる。あるいは、先生に対して信頼があるのか。


 そして、最後にベルギー王立水泳協会のからとスポーツクラブからの二つの修了証が渡された。

 スポーツクラブの方は水色の上質紙にBrevet de Pingouin(ペンギンレベル修了証というくらいの意味か)とあり、

*ちゃんと沈むことができる、とか、

*水中の物を拾うことができる、とか、

*腕を後ろ向きに回すことができる

(背泳ぎの腕をやらされていたので、それか?)

*一人でうつぶせでも仰向けでも浮くことができる

 だったので、これなら合格している! と思えたことであった。

 王立水泳協会のほうは、イラスト入りのカラフルな物で、コミカルなひよこの絵が書いてあり、大きく「小ガモみたいに、私は水が怖くないよ! 終了!」というような意味のことが書いてある。王冠や紋章も描かれていてそれっぽい。黄色い織りネームのようなものがホチキスで添付してあって、それが肩章のような、修了証なのであろう。

 親としては、一つのことをやり遂げられた達成感がじわじわわいてくるのだが、子供はわかってないのか、淡々としている。


 ところで、手続きのアナログなことを前回も書いたが、最初には頭金しか払っておらず(といっても90ユーロ中40ユーロ)、あとで請求書払いみたいに言われてたけど、来ないなあ、と思っていたのだが、最後に近いある日、観覧席で座ってみていたら、事務の女性が、いきなり「あなたまだ、お金払ってないよね!」と隣に座って、最初に私が書いた申込書を見せて、「これ、あなたでしょう?」という。

 その日は、お金をたくさん持っていたので、「ここで現金で払います」と言って、払ってしまった。会員カードにお金払いましたスタンプを捺してもらって一件落着。が、しかし、お金を払っていない人を洗いだして、見た目で声をかけているのだろうか。と思うと、またもなんという非合理的な――という思いが募るのだった。

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