2009年12月3日木曜日

世界地理のこと

 先日、私が、子供にノンフィクション絵本が欲しい欲しい! と騒いだら、元勤務先の先輩と母親が、「こんなの良さそう」といろいろ言ってくれた。と、一番に挙げてくれた一冊が偶然一致。てづかあけみ氏『はじめてのせかいちずえほん』。本に関してうるさいことは確実で、趣味がまったく違うはずのこの二人が同時に勧めてくれるなら! と思い、母親に買って送ってもらった。

 勧めてくれた二人は「5歳にしてブリュッセルに暮らしている子供の頭の中では、地理はどう理解されているのか」に興味があったらしい。
 地続きでいくらでも「外国」に連れだされているので、経験だけはしているが、理解はしているのかどうか。むしろ「海外」と、違う国はすべて海の向こう側――だった子供のときの私のほうが、強く外国を意識していたように思う。父親が海外単身赴任が多かったので、遠くに別の国があるのだ――とはいつもいつも思っていたし。
 一方、あんなに時間をかけて苦労して帰る日本なのに、母が「おばあちゃんもプールにいきますよ」とメイルしてくれば、自分が通っている水泳教室で会える気になってしまう。手紙を書いて、ポストに入れよう、と家を出ると、実家のポストに直接入れる気になっていたりする。
 5歳とは、そういうものなのかもしれないが、記憶や知識、情報が、点と線でつながっていて、面になっていない。空間だけではなくて、時間もそう。今日と昨日、この間とずっと前――がごっちゃになっている。

 そんな彼女の頭の中では、「言葉」が国を分けるかなりおおきなポイントになっているらしい。ドイツは「なにかしてもらったら、merci!じゃなくて、Danke!と言わなきゃいけない国」という理解。もちろん「プレモを買ってもらえる国」という理解もあるが……。言葉ベースなので、ブリュッセルとフランスが別の国で、でも、「Dank U」と言わなきゃいけないフラマン語圏のベルギーは、ブリュッセルと同じ国、と、理解できているかどうか。
 子供が通っている幼稚園は公立だが、外国人が多い地域なので、メンバーが国際的。20人のクラスのうち、把握しているだけで日本人3、イギリス人2、ドイツ人3、ポーランド人1、イタリア人3、中国人1――生粋のベルギー人のほうが少数なのだ。このクラスでも、誰々は何国人――というのは、彼女なりに整理しているのだが、それもやはり言葉ベース。
「L**はフランス人だよね」「え? イタリア人でしょ?」「だってフランス語できるよ」なんて言っている。「じゃあ、パパはドイツ語できるけど、ドイツ人?」と聞くと、平然と「そうだよ」。そんなに国籍が単純だったら良いのにね。でも、大ゲルマン主義みたいに危険なこともあるかな。「私もフランス語が出来るようになったらフランス人だよね」「ベルギー人にはならないの?」「???」。ちょっと理解を超えたらしい。「あんどほーは『えいごけん』だよね」。うーん、アイルランドやカナダ、可能性がいろいろあるから、私たち夫婦はそういう言い方してるけど、「けん」ってなんだか判ってるのかな。それにフランス語が公用語のクラスでは「あんどほー」になってしまってるけど、ほんとうはAndrewなんだよ。
 公用語はフランス語――と言っても、子供たちの間では子供語で通じ合っているのだと思う。お互い、自分の母国語で押し切って、それでも会話が通じているときもあるし、その場では、フランス語でぺらぺらしゃべっているのに、あとで私が「何話してたの」と聞くと、再現できないこともある。言葉すら使っていないときもある。その年代にこの環境にぶちこめたことを良かったと思おう。もちろん、これでは身に付かないので、他言語習得にはならないだろうが、そこまでは望んでいない。

 そんな彼女なので『はじめてのせかいちずえほん』では、各国の言葉での「こんにちは」が書かれた「いろんなことばが あるんだね」のページが気に入っている。「JはBuenas tardesって言うんだよ」なんて言っている。じゃあ、今度はJにそう言ってあげなよ! と言ったりするが、おっとりしたJ君は、日本人グループに混ざって遊んでいるうちに、日本語を話してしまっているそうである。

2 件のコメント:

Asako さんのコメント...

お久しぶりです。なんだか最近ネット離れしてまして。

5歳でヨーロッパに暮らしている人の頭の中、興味あります。今後もいっぱい書いてください。しかしJくんいいキャラクターですな。

私は5歳のときに自分が考えていたことの記憶があまりないのですが、その頃オーストラリアに引っ越すときに、「地球の反対側、全部さかさまなのよ」的な説明を受けたらしく、その国に行ったら、天井を歩くんだと思っていた、ということだけは鮮明に覚えています。行ってみて、別に日本と変わらないことに(家の床を歩く、という意味で)何の違和感も覚えなかったようで、天井を歩く件はその後ずっと経ってからふと思い出したのでした。

子どもの物事・概念の理解って話きいてるとホント面白い。うちの小一の長男は、しかし、かなりいろんなことが分かってきてしまったようで、ふつうの人と話すような感じで、楽しい反面、面白みが減ってきた。それでもニュースで「国が」とか言ってるのと、「(日本っていう)国が」というのと意味が違うことなどが難しいらしいです。

Amsel さんのコメント...

ごぶさたです。体調とか崩されてないですか?


そうそう、Jくん、去年同じクラスで、今年は違うのですが未だに仲良くしています。スペイン人です。この子は、そういえば、ちゃんとスペイン読みで「ほあん」とみんなに呼んでもらっています。そこにはどういう差があるのかな。
今年の同じクラスの中では、本文でもでてきた「あんどほー」が一番仲が良いので、いきなりりんごをアポーとか言い出したり、ときどき、英語が出てきます。本当に、いちど頭の中を見てみたいです。

5歳のときに、そういう説明でオーストリアに引っ越されたのですね。うちはどういう説明をしたんだったかなあ。そうだ、国が違って言葉が違う、というのをとにかく話した記憶がある。それが、この言葉の違いに反応するところに現れているのかも。
長男くんも、もうだいぶわかってきたのですね、うらやましいような。でも、この時期、理解が飛躍的ですよね。ときどき、子供に合わせたつもりで、わざと子供っぽく話して「それは違うでしょ」とたしなめられたりして驚くことがあります。