2009年10月26日月曜日

フランダースの旅のこと


 このところ、二回続けてフランダース地方に出かけて来た。ベルギーはおおまかに北部のオランダ語圏のフランダース地方と、南部のフランス語圏ワロン地方とに分けられるが、言葉が違うだけでなく、平地の多いフランダース、山地のワロンと、景観もずいぶん違う。フランダース地方は、運河沿いに走る自転車道、れんが造りの建物のファサードの様子等、やっぱりオランダに似ている。細かいことを言うと、お店もオランダ資本が多いので、自転車(オランダのメーカーGiselleが多くなる)を始め、道行く人のファッションもオランダっぽい(と思う)。はっきりいうと体型も違う(と思う)。

 最初はビールとリネンの旅。そもそも、その前の週末にポルトガルに行こうという予定があり、タブッキを読んだり、夫は『供述によればペレイラは』に出て来る地名マッピングまでして気分をもりあげていたのだが、子供の風邪であえなく中止。本来出かけているはずの土曜日、がっかりした夫がさっさとその次の週末に1泊の予定を組んだ――というもの。その後、私と夫も続けて子供にうつされてお腹にくる風邪で倒れて、またも行かれないのかと思わされたが、なんとか週末までには体調を立て直して出かけたのだった。
 まずは、ビール。ヴェストフレテレンを作っている修道院Sint Sixtusへ。ここは醸造量も少なく、また、販売委託をせず、飲むためのカフェが修道院に併設されているのと、持ち帰りの瓶ケースを予約販売しているのみなので、これまで飲んだことがなかった。ブリュッセルで開かれたビールフェスティバルにもブースを出していたのだが、午後一で出かけたのに、すでに売り切れ。どんなビールかと気分も盛り上がる。近づくと畑ばかりになり、辻に立つ方向表示を見ながら進む。一度「修道院」と書かれた表示を見落とし、広大な畑を一周して戻った。平地なので、かなり先まで見晴らせるのだ。 修道院には、12時ちょうどくらいに着いたが、カフェにはもう人が入っていた。駐車場には、ベルギーナンバー以外にも、フランスナンバー、懐かしいボンのナンバーも。そしてビールはとても美味しかった。わざわざ来た甲斐がある。そして、これもここの名物だという鶏肉のゼラチン寄せが和風かと思わせるさっぱりした味でとても気に入った。近いし、また日帰りで来よう! 今度は、ちゃんと持ち帰りビールも予約しよう!(ネットで予約状況が確認できるが、1週間くらい先まではびっちり埋まっているのだった)と決心。でもカフェの食べ物が基本つまみで、子供の好きなものはないのが難点か……。ちょっとした公園が出来ていて子供を遊ばせられるので、そこと、広大なじゃがいも畑、芽キャベツ畑を散策して酔いを醒ます。
 次に、やはりビールの産地Watouに行く。ここでもカフェに寄ってビール。子供はホットミルク。ここのビールは軽くて美味しいけど、あまり印象に残る感じではなかった。また酔い覚ましに街を散策。赤っぽいれんが造りの長屋のような家が建ち並ぶ中に、コミカルな姿のビール醸造家の像があったりするのも楽しい。
 この日は、ポペリンゲというホップの名産地だった街に泊まった。街のインフォのマークも、道路に埋め込まれたマークもホップがモチーフ。ホップ博物館まであるので行ってみる。ホップの保管に使われていた建物だという。一歩はいるなり薬草臭いような。今年の品評結果が書かれた紙が貼られて、それぞれの畑ごとにホップが展示されている部屋があった。嗅いでみて、これが良い、と素人が思うようなものは点が良くないところがまた面白い。歴史や収穫道具の展示を見て帰る。夜もまた地元ビール。
 翌日はコルトライク。この街はリネンの産地として有名で、リネン博物館に行くのが目的だった。午後から開館なのだが、午前中の早い時間に着いてしまい、街を一周してしまってお茶までしたがお昼ご飯を食べるのにも早い。あまり期待していなかったペギン会院というものに行くことにする。
 十字軍時代に戦争未亡人の生活を守るために建てられた建物――と聞いていて、修道院だと思っていたのだが、実際には、宗教的な性格は弱く、女性や子供だけの生活を守るために塀で囲い、建物群を作っているところ。それぞれ居住空間は独立していて、長屋のような建物が中庭を中心に建てられている。回りの街が、れんが造りで赤っぽく見えるのに対し、塀の中では白く塗られた壁、濃い緑や藍色で塗られた窓のあるこじんまりとした建物が並ぶ。静謐な雰囲気を持った小さな街のようだった。今も実際に人が暮らしている。資料館として公開しているものもある(が、午後からなので、今回は見られず……)。中世の雰囲気の残る建物といっても、これまで見て来た鐘楼や教会、商館のように贅をこらしていたり大規模だったりするものとまた違うところが素敵な印象。
 フランダース地方には、13の「ペギン会院」があり、世界遺産に登録されている。これまで興味を持たなかったことを恥じ(ブルージュにもあるのだが、素通りしているのだ)、これから見に行こうと心に誓う。
 さて午後。14時の開館まで待ちきれず、早めに博物館へ行くと、前庭にカフェがあり、にぎわっている。そこで待つことにすると、店の前に寝そべっていた白黒の犬が、子供を見つけてテニスボールを持って近寄って来、「あそびましょう」と誘うので、子供は、すっかり捕まってしまった。その姿が見える一番外に近い席に座って大人はビールとコーヒー。ときどき、煙草を吸いに外に出る人がいる。犬も、子供と遊ぶのが物足りないので、そっちに近寄って「ボールをなげてください」と頼み、遊んでもらったりしている。見ているうちに、博物館の建物に出勤する人が見え、いざ、博物館へ。
 本館の方はやはりリネンの歴史やその生産の展示。人間はマネキン人形なのに、馬や犬、猫といった動物が剥製なのがやや違和感あり(夫に言うと、そりゃ人間が剥製だったらまずいだろうとのことだが……?)。繊維を叩く道具や、紡ぐ道具などなどの展示がおもしろい。堪能して出ようとすると、もう一軒違う建物で展示があると言われる。裏庭を抜けて、もう一つの建物へ。そっちはリネン製品の展示だった。レースやリネンクロス、刺繍等、細かい展示が一階にあり、二階は、産着から、下着おしゃれ着、趣味の刺繍、そして病院や老人ボームのパジャマ、経帷子――と人生のそれぞれのシーンでのリネンという展示。楽しみにして来た私はもちろん、子供もすっかりレースや刺繍、豪華な子供服に目を奪われて「私も欲しい!」と騒ぐ。意外にフェミニンな趣味を持つ子供。

 さて、次の週は日曜日にLierという街に行って来た。ここは運河に囲まれていて、ペギン会院もあるという、ガイドには「小ブルージュ」と表現されているような街。世界遺産の鐘楼や、からくり時計のある塔もあり、とてもかわいい雰囲気。お昼に着くように家を出て、正午のからくり時計を夫と子供は見て(たいしたことない! とがっかりして帰ってくるが)、お昼ご飯。その後、黄葉の始まった並木道をどんぐりを拾ったり走ったりしながら散策。運河の土手に出る。運河沿いにポプラや柳が植えられ、自転車道が走っていて、14時だというのに低いところに太陽も雲もあり、光が弱々しい。オランダやベルギーらしい風景。「旅情旅情!」と騒ぎつつ歩く。子供は土手を半分降りたり上ったりしてはしゃぐ。はしゃぎすぎて転び脚をくじいて泣く。ペギン会の白い街に入り、のんびり歩く。古い井戸があり、その名も「井戸通り」という路地や、ツタの絡まる壁に挟まれた路地、一階の窓に目隠しに下げられたカフェカーテンが白地に白で猫や、花、四季のアレゴリーの模様だったり。カーテンを通して明かりがもれてきていたり、人の気配を感じるところも楽しい。もちろん、アルベロベッロの民俗博物館で書かれていて、考えさせられたのだが、「世界遺産」として保存することと、街として活かしておくことの両立はとても難しのだと思うが……。最後にカフェに寄る。子供が、そばの運河沿いに置かれたブリキの羊と羊飼いの像が気に入って遊びに行くというので、見張れる位置の外席に座る。ミントティを飲んでくつろぐと、こんなゆっくりした時間も良いなあという気持ちになってくる。

 この日曜から、冬時間になった。日本とは8時間時差。どんどん冬が近づいてくる。

※初めて画像を載せてみたが……。両方ともLier 2009/10/25

2 件のコメント:

Asako さんのコメント...

素敵ですなあ。寒そうだけど…。
しかし、写真もあって、(初めて?)それはそれで嬉しかったです。いつもの文章だけの旅行記でも、十分、旅情は伝わって、それもまた良いのですが。

Amsel さんのコメント...

ありがとうございます。写真、初めてなのです。載っけちゃうと文章要らないんじゃ? とか思っちゃって、がんばって文章で表現しようと挑戦してたんだけど、それも考え過ぎかな? とかも思い始めて。でも載せる写真を撮ろうと思うと、街の良いところを見るようになってきた気もしてます。