2009年10月15日木曜日

偏愛する肉屋のこと

 最近なんだか、「ブリュッセルぐちぐち日記」と化してきているので、気を取り直して好きなものの話ということで、ときどき書いている「偏愛肉屋」の話を――で、いきなり肉屋の話! というのもなんだが、私らしいともいえよう。

 子供を通わせている幼稚園のそば(家からは遠いがわなので、距離にして1km強くらいか)に教会の広場を中心にした小さな商店街がある。パン屋2軒、薬局2軒、床屋1軒、美容院2軒、コインランドリー1軒、子供服店2軒(うち1軒は高級っぽいセレクトショップ。もう1軒は古着や婦人服ほかもある庶民的な店)、肉屋1軒、婦人下着店1軒、カフェ1軒、中華料理店1軒、旅行代理店1軒、移民系スーパー1軒、大手スーパー支店1軒(しかし、営業時間が短く、もともと荒物屋がフランチャイズした雰囲気がみえみえであまりスーパーっぽくない)婦人服1軒、ビオショップ1軒、駄菓子や文房具も置き、最近は簡単な郵便局機能もあるプレスショップ1軒、不動産1軒、銀行1軒、合鍵や靴の修理をやってくれる店、チョコレートのノイハウス1軒。
 水曜日には小さな市が立つし、少し離れて、暖房具や水回りのメンテナンス店とクリーニング屋、花屋、保険会社?があって、ここだけで、生活のほとんどはまかなえる。お年寄りがカフェでくつろいでいたり、学校帰りの子供連れが細々した買い物をして子供も駄菓子を買ってもらう――そんな古くからある住宅街の広場。
 
 さて、その一角にある肉屋が私の偏愛肉屋No.1である。店名としては店主の名前がついているようだし、呼び名としては、この広場の教会の名前で呼ばれることが多いのだろう、包装紙にもその名前が入っている。でも、うちでは「若旦那の店」と呼ばれている。
 下世話な趣味だと思うが、個人商店のお店の人の人間関係を推理するのが好き。普通の店だと、顔が似ているとか、お互いの話し方で推理するのだが、肉屋は、骨付き肉を切ってくれる人が、店主(あるいはその家族)であることが多い。この店では、ちょっと馬面で目鼻立ちがくっきりはっきり、口を大きく開けて白い歯を見せて笑う男性が店主であろうと見当をつけた。塊肉から切り出してもらう注文をすると、ほかの店員さんも「それはムッシューでないと」と言って担当を替わる。以前、夕方空いているときに店に入ったら、彼が一人でラムを解体していて、私に気づかず、しばらくしてから、はっと気づいて糸鋸を手にしたまま振り返り、急に笑顔を作ったときは映像的に怖いくらいだった。
 その笑顔の清々しさと回りを固める店員さんたちが年配なことがあって、我が家の呼び名として「若旦那」と呼ぶようにしてしまったのだ。
 肉がとても良いし、ソーセージ、ハムといった加工品も美味しい。肉の中ではラムがとても美味しいが、まあ、こういうほうがまっとうなのだとは思うけど、いつでもすべての肉がそろっているわけではない。ラムを解体した日は新鮮なラムがたくさん並んでいるし、牛肉の多い日もある。ラムはナヴァラン用という角切りの煮込み肉を買ってくることが最も多いが、ないときには、骨付きのバラ肉を煮込む。焼くときには、もも肉の輪切りにしたもの。一度、ちゃんとしたロースト用の肉を買ってみたいと思うのだが、私の中の肉の値段コード1kgあたり20ユーロ以下を超える値段なので、まだ買ったことはない。豚のあばらに薄く肉がついた部位もよく買う。これは甘辛醤油味でオーブン焼きにして食べる。
 市の立つ日など、順番を待つ列が店内で折り返すくらいにごった返すときもあるが、お揃いの紺のギンガムのシャツに紺のエプロンのユニフォームを着てきびきび働いている店員さんの姿を見ているのも楽しい。襟と、背中のプリーツの内側に紺無地の布が切り替えてあるのがとてもおしゃれ。背中のヨークと胸に店のロゴが刺繍で入っている。並んでいるうちに、他の人が頼んでいる言い方を聞いて、注文方法を学んだりもした。ちょっと通ったら、私の顔を覚えてくれて、すっと常連に対する顔になってくれたときのことも忘れられない。

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