2009年8月3日月曜日

海のこと

 海辺の街Blankenbergeに行ってきた。
 私は湘南育ちなので、海は南向きに開いていて、明るいイメージがある。以前、瀬尾まいこ氏の小説(『天国はまだ遠く』だったか?)で、「海辺の街なので、北風が強く寒い」という描写があって違和感を感じたくらい。でも、こっちでは海は北。北海である。須賀敦子全集8に入った「ユルスナールの靴」に、オスタンドというここの隣くらいの街に行く話があって、そこでも、北の海に冷たく拒絶された感じを受けたように書かれている。

 が、じっさい行ってみると、空の色のせいなのか、砂の質のせいなのか、海の色が灰色っぽく地味で茅ヶ崎に似ている。私にはなじみに感じられる海岸なのだった。これまで行ってきたヨーロッパリゾート地が「ハレの海」なら、これは「ケの海」といえよう。庶民的な雰囲気。
 海岸に面して、日中、自動車の出入りを禁じられている広い通りが伸びていて、それに面して、無機質な高層マンションみたいなホテルがたくさん建っている(一部はリゾートマンションなのか)。その一軒に金曜の夜から泊まった。
 夜、もう遅くても明るいので、子供は興奮して行きたがる。小さい頃は茅ヶ崎の海に何度か連れて行っても、「動いている動いている!」と波に恐がり、波打ち際にも寄ろうとしなかったのに、成長したものだ。貝殻を拾ったりして、ホテルに戻る。

 翌朝、ご飯のあと、下見と称してまず海に。10時前には、まだ人も少なくて、目つきが凶悪なのに、母親に甘えているカモメのひながいたりする。もう自分でも飛べるし、餌も拾えるのに、親が来ると、みゅーみゅー言って近づいて行くところは、スズメと変わらない(人間とも、か?)。 そしてこの海岸は、なぜかてんとう虫がたくさんいる。餌のアブラムシも、植物さえないところなのに。越冬前の群れ作りの期間なのだろうか。さすがにまだ暑いと思うけれど。
 ホテルで着替えて、いざ、出陣。砂浜には、小さな物置小屋や、寝椅子、パラソルが並んでいるけれど、それぞれ、ついたてなどで仕切ったなわばりごとに「海の家」があって、貸し出ししている。砂浜におりると、そのなわばりの海の家の人がさっと寄ってきて、客引きする。うちは、ホテルからすぐの店で借りることにした。一日一台5ユーロだった寝椅子を2台借りることにしてお金を払うと、緑色のビニールテープを2片くれて、好きなところに貼れ、という。それが借りている証拠になるらしい。さっそく確保して、荷物を広げる。
 うちのところの海の家には、ティーンエイジャーの男の子が一人いて、ベビーカーをもって降りようとする人がいたりすると、さっと駆けつけて手伝って、ていよく売り込んだりしていた。
 縄張り内に、滑り台やトランポリン、ミニラケットやフラフープ等、これは無料で使える子供の遊ぶものもしつらえてある。しかし、パラソル4ユーロ、普通の椅子3ユーロで、日本の海の家と違って、食べ物とかは売らないから、あまり良い商売じゃないように思えるのだが……。といっても、そもそも、シーズンしかなりたたない商売なので、これだけを生業にしているというわけではないのだろう。
 食べ物は、アイスクリームやドーナツを、手押し車や箱で売りにきていた(昔の駅弁風)。

 子供も、午前中は、両手を挙げて海に駆け込んでみたり、浮き輪に掴まって波を飛び越えてみたりとさんざん楽しんでいた。最初は親の方がおっかなびっくりだったが、遠浅で、波も穏やかで、意外に怖くないと思えてきた。でも、午後になったら、波が少々高くなって、子供は頭からかぶってしまい、急に怖くなって、海に入らなくなってしまった。そこからが、暑くなって醍醐味だったのに。
 夫と私とで代わり番に浮き輪をもって、沖で浮かんで遊んだ。浮き輪に身を任せて波に漂うなんて、学生のとき以来ではないだろうか。懐かしい感覚だった。

 午後も早々に、海から上がって、シャワーを浴びて着替えて、今度はゴーカートを借りた。これは、雑誌の別冊の海辺情報の号に出ていて、やりたいと思っていたもの。親子三人で借りに行ったら、リヤカーくらいの見た目で、ペダルとチェーンが二台分付いていて、後部にも二人分の座席と、一番前に子供用の座席が付いているのを選んで貸してくれた。子供はさっそく、前に乗せてもらって機能していない飾りのハンドルをぐるぐる回す。
 運転してみると、意外に力が必要な無骨な乗り物で、がたがた音を立てて走る。若者たちは、おそろしいスピードで走っている。ハンドルは、運転席の片方のだけ機能しているので、夫がそっちに乗った。途中、雨が降ったり、海岸沿いの道に出たら、海から引き上げる人の波に巻き込まれたり。でも、子供は変な乗り物が好きなのでずっとご機嫌。でも、このあと、一日の疲れが出たのか、興奮し過ぎなのか、車上で寝てしまった。
 レンタルした店に返しに行ったら、お店の人が、子供にくれようと、棒つきキャンデーを用意して待っていてくれて、みんなで寝ている姿を見て、がっかりしたり、笑ったりした。

 みんなで昼寝して、その後、夜ご飯を食べに出たときには、ゴーカートがすごく増えていた。20時すぎでもまだ明るいし、人も減っているから、確かにこの時間帯の方が楽しそう。私たち一家は、今日は、全般的に前倒し過ぎだったかもと反省しつつ、夜ご飯を食べる。食べ物も全般的においしかった。この日も、22時くらいまで明るい浜辺で遊んでいた。満足の海の街だった。
 日曜日、ヨットハーバーのあたりにフリーマーケットが立ったり、鼓笛隊が出たりしているのを横目に、朝出発、途中の小さな街に寄ったり、やはりこれも近くにある夫の秘書氏のご自宅に招かれて寄ったりしながら、だらだらと帰ってきた。

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