2009年7月29日水曜日

母親とブリュッセル観光のこと

 母親の三週間の滞在も、気づけばあっという間に終わっていた。子供の不調で、丸一週間(正確には月~金の5日間だが)家に足止めをくらったせいもあるとは思うが。グリンデルヴァルト観光も、もちろん、目玉だったのだが、普段、娘一家が住んでいる街を見たい、というのもあるだろうと、いろいろ連れて行きたいところを考えていた。

 まず、来て翌日は、子供がスタージュに入っているので、都心に出て、いかにも観光ツアー。王立美術館とその付近、そして母親のリクエストでオルタ美術館。オルタは午後からしか開かないし、立地からしたら、楽器博物館も回れるのだが、ここは子供も好きだし、水曜日にいろいろ体験できるアクティビティも用意しているというので、次の週に回すことにした。これが失敗だったとは神ならぬ身の知るよしもないことであった。
 王立美術館では、ちょうど、修復したばかりのレンブラントの絵の展示があり、修復作業の工程の展示もあって、なかなか面白かった。その他は――「私、こういうなんでもあり美術館って好きじゃないのよね~」と生意気をいう母親と、「うーん、でも、この機会に、ブリューゲルくらい見ておこうかな~とか思って」とさらに傲慢な私。「やっぱ、クラナッハのこの性格悪そうな女って良いよね!」「胸小さいしね!」と意見が一致しつつ、ほんとうにさらっと流しました。

 本当は、開館したばかりで話題のマグリット美術館も行けばよいのだろうとは思うのだが……。
 私の学生時代は、バブル時代というか、セゾン文化華やかかりし頃というか、ちょうど「美術展にいくのがちょっとおしゃれ?」な流行がある頃だった。その頃、上野の近代美術館で大規模なマグリット展が開かれた。記憶しているだけで、四人の人から「美術鑑賞とか好きなんだって~? じゃあ、マグリット展とかどう?」と誘われて、「興味のある物しか行きたくありません。マグリットは嫌いです」と断った。美術鑑賞が好きなら、なんでも良いと思うな! 「とか」ってなんだ! という気分であった。まあ、この甲斐あって、その後、あまり不毛な誘いは(あるいは、有意義な誘いも?)受けなくなったけど。若気の至りエピソードですな。ちょっと弁護しておくと、やはり貧乏学生、お金も限られていたので、好きな物に厳選して使いたかったのですよ……。
 その後、やっぱり付き合いで行った嫌いだったはずのカンディンスキーとか、時間つぶしに興味ないけどな……くらいで行ったモランディが好きになったりしたので、あまり食わず嫌いはいけないなあと思うし、このエピソードも一時期は封印したいくらい恥ずかしかった。でも、年を経て、今は、その時の私に敬意を払って?マグリット美術館はパスしよう、という気持ちに傾いている。

 さて、その後、サブロン広場のあたりを歩いて、子供が一緒だと入りにくい教会に入って、ステンドグラスを眺めたり、ウィッタメールのカフェでお昼ご飯を食べたり、母子デートを楽しみ、トラムに乗って、オルタ美術館近くのアールヌーヴォー建築を眺めて歩いて時間をつぶし、オルタ美術館へ。前に一度、夫と来たことがあるはず(10年近く前だと思うが)だが、だいぶ忘れてしまっている。意外に小さなスペースに、もちろん、事務所も兼ねているから、ショールーム的な意味合いもあったのだろうけれど、これでもかこれでもかと意匠を詰め込んである。
 美術館にいる間に、一転にわかにかき曇って、ブリュッセル名物、いきなりの大雨、そしていきなり上がる、も母親に体験してもらえて、なかなか良い一日だったと思う。
 出だしは、ほんと、良かったんだけどな〜。

 その後、子供不調の一週間、旅に出た一週間を経て、帰ってきたら、もう実質2日しか観光できる日は残っていない。焦りつつ、疲れた母親をいろいろ連れ回す。

 一日目は、平日だったので、子供を連れて、三人で楽器博物館へ。ここは、入館時にヘッドホンが借りられ、展示の楽器の音が聞けるようになっている。いろいろな楽器の前で立ち止まり、聞きながら、踊る子供。ヨーロッパの民族系古楽器、アコーディオンに強く反応している。恥ずかしい気もするが、なに、大の大人もけっこうやっている。楽しい博物館。
 地下の体験コーナーで、ピアノが弾けるところがある。今回は、30代くらい?のこなれた感じのカップルの男性が「ねこふんじゃった」を、小学校低学年の姉弟を連れた若いお父さんが「グリーンスリーブス」を、若いカップルの女性が「エリーゼのために」を弾いていた。以前は、ティーンエイジャー男女4人組の、片方の男の子が「スモーク・イン・ザ・ウォーター」を弾いて、女子たちの気を引いていたのも目撃したこともあり、やはり、個性が出るのう。
 その後、子供の好きなアイスクリームを売るカフェに出て、子供は子供用アイス、大人はこれまたブリュッセル名物の「Dame blanche」を食べる。これはバニラアイスにチョコレートソース(ソースは熱くしておく)をかけたもの。母親も気に入ってくれた。近くの子供靴アウトレットの店に行き、あーでもない、こーでもないと騒ぎつつ、靴を選ぶ。けっきょく、子供の気に入ったのを買わされました。

 翌土曜日は、子供を夫に預けて、母親の義理土産つぶしに。見ていないというギャラリ・サンテュベールを流し、グラン・プラを一応見せて、やはりサブロン広場に出る。ちょうど週末でアンティーク市が立っていて、お菓子型や、レース等ちまちましたものを見て楽しむ。リネンハウスでフランドルリネンを見て、そして、お菓子を買うべくウィタメールとマルコリーニを行ったり来たり。母親の煮え切らない態度にいらいらしたり、いや、このぐちゃぐちゃ考えるのが、買い物の醍醐味のはず、余裕のない状態で買い物をしているのがいけないんだと自己嫌悪したり……。

 日曜日に、みんなでシャルルドゴール空港まで見送り、母親は帰って行った。

 本当は、こんなに忙しく詰め込まないで、いつも、子供と遊びに行っている公園(大きな緑地公園も、小さな遊び場的公園も)や、隣町のちいさな店とかを回って過ごしたかったなあ。そう言ってみるけれど、母親も「また来れば良いんだよ」とは言わなかった。私も「だからまた来い」とは言わなかったし。今回が、母親の最後の海外旅行になるだろうと、途中から、ちょっとした言葉の端々にも感じられて、私はかなり感傷的な気持ちになってしまっていた。ぼけてくるとか耳が遠くなるとか、なだらかな変化もつらいけど、こういった一つ階段がある感じはちょっとこたえる。もちろん、私だってもう、人生折り返し地点を過ぎていて、前だったら出来たことができなかったり、あきらめたりすることが増えてきている訳だけれど。
 母親からは、時差ぼけもなく元気だとか、帰ったら矢野君が復活していて、阪神が勝ってるとか、もちろん、感謝の言葉も連なったメイルが来て、まあ、感傷してるのは私だけかな?

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