2009年7月23日木曜日

腹痛のこと

 最初におかしかったのは、日曜日の夜だった。私は、
*母親の市内観光
*子供の服ほかバーゲンを効率よく回り、遺漏なく買う
*日用の買い物――肉屋等、夏休みが始まるので要注意
*子供を飽きさせないために公園を適宜入れる
 を、いかに効率よく回るか、頭がいっぱいになり、表までつくって整理していたところだった。
 子供を寝かしに行った母が戻ってきて、子供が「やっぱりパパじゃないと眠れない」と言って泣いていると言う。行ってみると、ほんとうに涙を流してしくしく泣いている。しょうがないので、夫がバトンタッチして寝かしつける。

 翌朝、子供がおなかが痛いと言う。様子も変だし――と、母親と二人を残して、出勤の夫の車に同乗してスーパーとパン屋に買い物に行く。来た当初、失敗したので、二度と買わないと思っていたスーパーの肉を買う(結局、たいしてまずくなかったでした。偏見ですみませんでした)。

 さて、で、買い物を終えて戻ってみると、子供は元気になっていた。昼ご飯のときも食欲旺盛で「さっきのおなか痛いはうそのおなか痛いだったの」とかのたまう。へーそーですか。ちょっと予定が後ろにずれたけど、午後から都心へバーゲンへ。でも、街に慣れていない年寄りと、子供と二人連れて行くのは意外に疲れる。がんばって、トラムとメトロと乗り継いで遠出してしまったし。ショッピングアーケードで、空気が悪かったのか、二人が「疲れた」「なんだか息が苦しい」などと口々に言うので、必須のこどもパジャマ2枚だけ押さえて、お茶を飲んですぐ帰る。
 そして、夜ご飯はあまり食欲がない。お茶のときに、一人で大量にクレープ食べたからかな、とか、豚肉嫌いだからなとか思っていたが、やはり寝る頃には「おなか痛いおなか痛い」という騒ぎになる。また、夫にべったりくっつかないと寝られなくなり、夜、一度また起きて泣いたりした。
 訴えるのは腹痛だけで、吐きも下しもしない、熱も出ない。たいしたことはないのではと思いつつも、私も夫もあまりそういうことはない(私も夫も劇症が出て、けろっと治るタイプ)ので、不安になって二人でネット検索してますます不安になる。
 朝もまた、おなか痛いおなか痛いと騒ぐので、日本語の分かる女医さんのところに電話をして予約する。昼の予約が取れたので、私はマルシェへ、夫はいったん職場へ。子供は、起きたものの「おなか痛い」と泣きながら、またぐったりと寝てしまう。熱だって、39℃を超えないとこんなにぐったりはしないのに、といやーな感じになってくる。母親が、「それは今を去ること半世紀ほど昔のこと――」と私の叔母や、その息子が盲腸になったときの話を講談調におもしろおかしく話し始める。昔は、入院するには患者が布団を担いで行ったとか、従弟は腸が長過ぎて、手術にえらく時間がかかったとか(『動物のお医者さん』の菱沼聖子みたい?)。

 自動車で医者に行くために夫が中抜けしてくれたが、子供は薄く眼を開けるだけで、もうろうとした感じ。抱き上げようと、車に乗せようと反応がない。
 が、医者について日本式に靴をスリッパに履き替えようとしていたら「私も履く、そのミッフィーのがいい」といきなりはっきり言う。急に立って歩き始める。医者が、喉やリンパ腺もなにもないと確認して、おなかを触診する。「腸は炎症を起こしていますね。まあ、風邪でしょうか。整腸剤と抗生物質を出しておきます」
「あの、盲腸とか、そういうことはないのでしょうか」と聞いてみると、一瞬眼が冷たくなり(と私には思えた)、
「それは100%――いえ、もちろん、かなり初期で、これから悪化してくるということもあるわけですから、100%とは言い切れませんけど、でも、もう99.9%ありません!」と断言される。

 帰ってから、夫も含め、大人三人で昼ご飯を食べる。診察の話をすると、母親にも「盲腸なんて! あり得ない! よくそんなの恥ずかしいと思わず聞けたね!」とバカにされる。いやでも、疑問は、その場ですべて解決しないと! 子供はバナナを食べさせるが、3分の1くらいしか食べられない。昼休みが終わるのを待って、薬局で薬を買ってくる。14時半に飲んで、母親が「この時計が15時になったら、おなかいたくなくなるよ」とまた根拠のないことを言う。が、暗示が効いたのか、15時には、いきなりけろっとして楽しく遊び始めたのだった。恐るべし、暗示。いや、整腸剤が良いのか?

 買ってあった絵の具を出してやり、ベランダ用のテーブルを買ったときの段ボールがまだあったので、それも解体して、思いっきり描くが良いよ! と言ってみたが、意外に物怖じするたちなのか、あまり思い切ったことをしないので、私が大きくワニを描き、色を塗らせることに。巨大ワニなのに、飽きもせずぺたぺたと塗り上げて行く子供を見て、この集中力は、むしろ体力が落ちているせいなのかも、と思う。スポンジをハート形や、三角に切って、それを絵の具に付けてスタンプにして模様を付けさせて完成した。

 その後も、一進一退を繰り返しつつ、金曜日まで、必須の買い物以外、外に出られない日々が続いた。遊びにきた母親も、ずっとべったり家にいてかわいそうだが、海外慣れしていた父親と違い、母親は一人で外に出すこともできない。
 金曜の昼からは、ちゃんと子供の食欲も復活したので、母親リクエストで企画していた「グリンデルヴァルトでトレッキング、前後にアルザス、計6泊7日ツアー」を敢行することに。それは改めて、別の話とするが、旅行中、うつったのか、今度は夫がおなかを壊し、つらい日々を送ったのだった。
 夫婦二人だった頃は、風邪はうつし合わなかったのに、子供が出来たら、てきめん、一人が体調を崩すと、全員がうつる。親になったら、体調崩してられないから、体も強くなると聞いていたのになあ……。

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