2009年6月9日火曜日

パリ行きのこと

 週末、一泊でパリに行ってきた。ブリュッセルからパリまでは、ブリュッセル=ミディというターミナル駅から特急でほぼ一時間半。地図でみると、ケルンの方が距離的には近いのに、残念ながら山脈が邪魔をしているから、そっちは二時間半はかかる。よく出張で名古屋に行っていたが、それとあまり変わらない感じ。
 11時の特急で、12時半にパリには着いてしまう。お昼ご飯をパリで遅めに食べることにして、行きがけにマルシェで焼き菓子を買って出かけていった。三人で予約を入れているので、間にテーブルを挟んだボックス席がとれている。駅で買った簡単なぬりえの本や持ってきたプレモ(細かいパーツは置いて、二人だけ)で遊んだりして、12時になったところで、お菓子を食べた。となりのボックス席には、小学生くらいの三人兄弟がいて、やはり、12時になったら、一番大きい男の子がお弁当を配り始めた。バゲットにハムとクリームチーズを挟んだものをホイルで包んだのと、ヨーグルトドリンク、リンゴ。ついつい観察してしまう。そういえば、名古屋出張も午後一で打ち合わせを入れることが多く、新幹線の中で12時を待ってお弁当を食べたものだった。

 調べておいたビストロに行ったら意外と高級でびっくりしたけど、さすがに美味しくて、難易度が高いと思った鴨のサクランボソースを子供にたくさんとられて驚いたり、ブックオフに日本の本を売りにいったら、久しぶりに見る日本語の本に大興奮の子供にそれ以上に高い子供の本を買わされたり。私にはギャラリー・ラファイエットの「これぞデパート!」っぷりが久しぶりだったり(英語を話すフレンドリーな店員に驚いたり)。
 疲れたと言う子供と夫がホテルに帰ったので、急にできた一人の時間に、大喜びでパサージュを散策したり、お菓子屋さんで、量り売りのキャラメルを買ったりして、パリ気分を堪能。その後、また家族で今度は本当に庶民的なビストロに、夜ご飯を食べに出かけたけれど、これまた美味しくて大満足だった(しかもブリュッセルより安い)。

 さて、今回のパリの目的はポンピドーセンターの「カルダー展」。カルダーは、最初に見たのはなんだったんだろう。一番古く記憶にあるのは、コルクと針金で作った動物のおもちゃ。かわいくて、大好きになった。その後、モビールを知ったのだけど、個人展は見たことがなく、写真でばかり見ていたのだと思う。今回、開催に気づいて、どうしてもといってやってきたのだった。旅の鉄則?で、土曜日に買い物を、日曜日に美術館に行こうと、わざわざ二日目に回して、十時前にたどりついたのだが、なんだかバリケードまでして物々しい警戒。それでも、しばらくは開館前だからかと待っていたが、10時を過ぎても開かない。そばの警官に「今日は開かないのですか?」と尋ねると、例の否定の否定「Si!」が返ってくる。「開くけど、午後になります」「午後って何時ですか」「正午です」「なにがあったのですか?」「オバマ夫妻が来ているのです」
 そういえば、カルダーはアメリカ人だった。

 警戒ぶりにも納得が行き、しょうがないので、お昼ご飯とその後の散策の予定だったモンマルトルに出た。雑誌で調べておいた、パン屋さんでパンを買ったり、甘いものを買ったり、お惣菜屋さんの位置や、お昼ご飯の店候補を確認しても時間が余ったので、階段をいくつも登って、公園に出た。子供を放し飼いにして、まだ若いサクランボを付けた木の下のベンチでさぼっていると、緑が多く、高台で風が渡り、とても気持ちが良い。周りにも雑誌を読んだり、携帯を見たり、ちょっと気持ちを子供からそらして緩めている親たちがいる。全体に斜面になっているところに棚田のように作った遊び場で、その斜面にシートを貼ってあって、登ったりすべったりして遊んでいる子供たちが多い。うちの子供も、滑り台や砂場などの遊具はすぐに飽きて、その斜面で遊び始めた。
 12時になって、ほかの子供たちも呼び戻されて帰り始め、私たちも引き上げてきた。同じ斜面の下の棚田は、ペタンク場で、けっこうお年寄が集まって、投球していた。
 昼休みの早いお惣菜屋さんで、夜ご飯用のローストポークを買って、塊でくださいとグラム指定して言うのを、あなたたち、三人で食べるんでしょう? 三枚に切ってあげるから、そのほうが良いから(C'est mieux! C'est mieux!)と繰り返されて、切り身を、また「ほら、この方が良い」と得意げに笑って見せてくれた。プラスチックのフォークとナイフも付けてくれて、パリの人って、こんなにおせっかいだったっけ? でも、重さがぴったりだったのはさすがだった。

 お昼ご飯も、またまた堪能して、捲土重来のポンピドーセンター。今度は、無事、開館していた。一階に、子供用のギャラリーがあって、そこでカルダーの世界を体験できる展示がいろいろあったので、最初に行ってみたら、子供がおもしろがり、夫が見ているというので、そこに置いていくことにして、展示には私一人で行った。
 展覧会はまた楽しくて楽しくて、これは、私の悪い癖だけれど、好きなものがたくさんあると、もう興奮してしまって、その場に長くいられなくて、走るようにして見てしまう。前に、子供に「そんなに興奮するな!」と指摘されたことさえある。
 針金の作品をつり下げて展示して、白い壁に影が映るようにしてあるのも、思ったより小さいコルクや木でできた動物たちも、本当に愛すべきものたちで、見ていると胸がどきどきしてきた。いつも、展覧会は「この中で、一つもらえるとしたら」を考えながら見てしまうが、今回、もしいただけるなら、1928年の猫のランプをぜひ、いただきたいです。座った猫をぐーっと伸ばした形の針金の顔の部分からランプの幌が提げてある、とても可愛いもの。

 うちのより小さい子供もたくさんいて、楽しんでいる様子だったので、置いてきたことを後悔したけれど、さっさと見て、戻ってみたら「えー、まだ遊んでいたいのに!」と言われるくらい、その子供用のスペースを楽しんでいた。そのまま、はしょってきた同時開催のカンディンスキーを見に戻ろうかと思ってしまった。
 本物を見ないでそこで遊んでいるのも邪道かもしれないけれど、カルダーのモビール作りの原理がわかるように、あの特徴的な丸三角型の板を使ってバランスをとることを学べたり、チェーンや針金で、一筆書きの形を作ったりができ、カルダーが作ったおもちゃのサーカスのビデオを流していて、それはそれでとても楽しいものであった。

 展覧会、とくに好きなもの、思い入れの強いものは、一人で見るのが一番だと思ってきたけれど、働いて、結婚して、子供ができてと時間が少なくなってくると、夫と、そして家族で来ることが多くなってきてしまった。夫は、それほど興味がないので、子供にあわせて、集中力が持つ限りは一緒に見たり、欠けてきたら外に連れ出したりしてくれている。前に、フランドルのタペストリー展に行ったときは、子供はまったく興味が持てず、かなり早い段階で、私一人になってしまったし、前に、やはりパリにピカソ展に来たときには、最初は、面白がって、むしろうるさいのではないかと思うくらいだったが、静物の牛の骨が怖くなってしまい、残り4分の1くらいのところで退場になってしまった。二人は、あの展覧会の目玉のゴヤの裸のマハ、マネのオランピア、ピカソの裸婦のそろい踏みを見損ねているのだった(もう一つの目玉、ベラスケスの王女マルゲリータを何種も連作で本歌取りしているのは、無事、見られたけれど)。

 好きなものを邪魔されないで見たい、という気持ちと、自分の好きなものに家族を連れ回すのと、どっちがエゴ度が高いだろうと思いつつ、しばらくはこういう時代が続くのだろう。
 ブリュッセルの家に帰って、そばつゆを作って、そばをゆでて、買ってきたローストポークで夜ご飯。そばを飢えたようにむさぼり食べる子供に「お前は、旅行も好きだけど、お家も好きだねえ」というと「うん」とうなずく。「旅行は、嫌い?」と聞いたら、「なに言ってんだ!」と笑い飛ばされてしまった。

2 件のコメント:

Asako さんのコメント...

いいなあ、パリに一時間半で行かれるとは!満喫したみたいですね。やはりちゃんと事前にお店などを調べているから効率よく回れるというのもあるのでしょうね!

そして展覧会も良いですね。そして、うれしくて興奮すると早く見ちゃうっていうの、本当によく分かります!!こんな雑に見ちゃいけないのに!もっと堪能すべきなのに!でもなんかこわいというような。

といっても、日本で展覧会に行くとたいていDistractionが多くて(人が多すぎるので、自分のペースじゃないし、なんかこの人たちうるさいなあ等)、そこまで紅潮することはない気がするなあ…。

Amsel さんのコメント...

コメントありがとうございます!
そうそう、展覧会、ゆっくり見られる人は見落としがなかったりして、うらやましく思うんですが、なかなかゆっくりできないんですよ。展覧会だけじゃなくて、本とかも、面白いと、すごい早さで読んじゃって……。本なら、また読み返して、読み落としを読み残しを拾うこともできますけどね。

しかし、私も、東京の展覧会の混みようは異常だと思ってましたが、さすがに、このブログに書いたピカソ展と、カルダー展は混んでました。ピカソ展なんか、上野の美術館みたいに、外に何重にも折り返した列ができていて……でも、子連れは、こっそり横の入り口から入れてもらえたのです。ラッキーでした。